「東京とあんまり変わらないな…」


それがニューヨークへの最初の言葉だった。
街は何処から集まってきたのかと思うくらい、
様々な髪の色、瞳の色を持った人々が生活している。


俺がニューヨークに来た目的は仕事。


それと、少しばかりのオフを取るため。

俺は一応、俳優という仕事をしている。


俳優と言っても演技なんかは二の次で、売りはルックスだけという
どちらかと言えばアイドルと言われる方が正しい感じだ。
テレビや雑誌で俺を見ている人達だって、俳優としての俺の事を見ている人なんていないと思う。

しかし、そのルックスのお陰で人気が上がり、あっという間に名前が売れ、
テレビで俺の顔を見ない日がないというくらいにドラマ・CMと仕事には事欠かない。

プロダクション側はその人気を利用して、今度はバンドのヴォーカルとして売り出そうとしている。

バンドと言ってもバックの連中はスタジオ・ミュージシャンで、
あらかじめ、プロダクション側がお膳立てしたバンドだ。
そのヴォーカリストとしてのデビュー・アルバムをレコーディングする為に、
わざわざニューヨークまで来たというわけだ。

だいたい、俺は歌には自信が無かったし、どこのスタジオでレコーディングしようが
出来などそんなに変わるものではないし、ニューヨークで録ったからといって売れたら世話ない。

確かに《都内某スタジオ》より《ニューヨーク○○スタジオ》の方が聞こえはいいが…

本当は飛行機で移動している時間でさえ、惜しいくらいにスケジュールが詰まっている。
そんな中でレコーディングするのだから、当然、時間に余裕なんて無い。
しかも、俺は今度の仕事に関しては右も左も解らない素人ときている。



しかし、この仕事が終れば数日間ではあるがオフが待っている。
このオフは気乗りのしない仕事をする代わりに、俺がプロダクション側に要求したものだ。

実際、ここ数ヶ月は仕事に追われてまともな睡眠時間すら無かった。
お陰で疲れとストレスが溜まりに溜まっている。
もちろん、ストレスの比重の方が遥かに高いというのは言うまでもない。

ほんの束の間とはいえ、束縛から解放される。
面倒な仕事の事を考えるよりも、俺は解放される喜びを考える方が大きかった。



>>2>>